01. 保険経営全般

保険会社の社会的役割

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あけましておめでとうございます。
本年も引き続きよろしくお願いいたします。

2016年を振り返ると、保険会社にとって、
その経営のあり方が問われた年でした
(それは現在も続いています)。

昨年は熊本のように、大地震の発生確率が
必ずしも高いと考えられていなかった地域で
大きな地震が発生しました。
また、北海道に台風が上陸し、大きな被害を
与えるというのも、従来にはなかった話です。

日本の保険会社の社会的役割を踏まえれば、
少なくとも業界全体としては、自然災害リスクを
引き受けないという選択肢は考えにくいでしょう。
自然災害による被害を目の当たりにすれば、
むしろ補償ニーズも高まっていることと思います。

ただ、リスクの把握が難しくなっているとしたら、
従来の延長線上で引き受けるのが経営として
健全な姿ではないはずです。
会社が傾いてしまっては、そもそもリスクを
引き受けることなどできなくなってしまいます。

保険会社もその点は理解しているので、
リスクと自らの経営体力を慎重に見極めつつ、
社会的役割を果たそうとしているように見えます。

昨年は金利についても、日本銀行のまさかの
マイナス金利政策による影響で、利回り曲線が
極端に平坦化してしまいました。

その結果、ソルベンシーマージン比率が引き続き
高水準となる一方、これまで生保の経営実態を
より正しく反映するとされてきたEVやESRなどの
指標が大きく減少/低下する事態となりました。

見かけ上の「逆ざや」は消えていても、
過去に販売した高利率契約の責任準備金は
決して少なくありません。
金利低下により高利率契約の負担は一層重く
なってしまいました。

このような状況下で、長期の保障に対する
ニーズに経営としてどこまで応えるべきなのか。

先の自然災害リスクと同じように考えれば、
従来の延長線上での経営が健全な姿では
ないはずです。

しかし、今の低金利を一時的な異常事態として、
時計の針を止めるような話ばかり聞こえるのは
どうしてなのでしょうか。

保険会社の社会的役割はリスクテイクですし、
リスクテイクは収益の源泉でもあります。

ですから、過去に経験のない環境下において
やるべきことは、これまで活用しようとしてきた
経済価値ベースの経営管理を「変動が激しい」
「極端すぎる」として遠ざけることではなく、
この環境でリスクテイクがどこまで可能なのかを
見極めることこそが重要なのだと思います。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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